彦根城の価値を示す2つの視点
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内部における機能と集約性 区画された内部に大名政治に参加する全ての重臣と必要な施設を集約し、秩序ある配置によって一体感を形成し、公平な意思決定のための体制と機能性を実現。
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外部からの象徴性と隔絶性 大名による唯一で公正な権力の存在を威厳をもって可視化し、象徴するとともに、地域との物理的な隔絶によって、個別的な利害関係が形成されないように徹底。
城の5つの物証にあらわれる
江戸時代の政治の特徴

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①二重の堀と石垣 城を厳重に囲い、威厳をもって外部との差異を明示する。 彦根城では…江戸時代の絵図の堀と現在の航空写真の堀とがぴったり重なるほど、同じものが残っています。絵図と航空写真
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②天守 唯一で正当な権力がここにあることを象徴。威厳のある姿が遠くからでもよく見える。 彦根城では…飾り金具や飾り屋根が発達し、一目見れば彦根城と分かる優美な姿です。
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③御殿 城の中の最重要施設で、大名の居所であるとともに、重臣たちの合議や儀礼を行う。 彦根城では…御殿のあった場所に、地下遺構を保護のうえ、同じ形状で博物館として復元されており、井伊家による政治の記録やお殿様の宝物を見ることができます。彦根藩の政治はこの場所で決まりました。
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④重臣屋敷 重臣の屋敷が秩序正しく配置され、それぞれの役割に応じて政治を補完。 彦根城では…約30人の重臣が藩の統治に携わり、屋敷を与えられました。国内でも最大級の長屋門が、重臣の力を表しています。
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⑤大名庭園 理想とする美しい景色の中で、儀礼や文化活動を通じて大名と重臣が教養を高め、価値観を共有。 彦根城では…当時のまま残る名勝の庭から、ホンモノの天守を見上げることができる、全国唯一の大名庭園です。
この基本的な特徴は、全国約180の城で共通していました。
しかし、明治以降の廃城やその後の戦災等により5つの物証を備え、
江戸時代の政治の仕組みを体感できる「城」は今や彦根城が唯一となりました。